太陽光発電のパワコン1台停止を放置すると?売電損失の計算方法と対応
太陽光発電所に複数台のパワーコンディショナ(パワコン・PCS)が設置されている場合、1台だけ停止しても、残りのパワコンは発電を続けます。
そのため、発電所全体が停止した場合と比べて異常に気付きにくく、売電明細を確認して初めて発電量の低下に気付くことがあります。
- 5台あるパワコンのうち1台だけ停止している
- 発電所全体では発電しているため、故障に気付かなかった
- 売電明細が届いてから、前年より収入が少ないことに気付いた
- 修理費用がかかるため、しばらく様子を見ようと考えている
- 1台だけなら放置しても問題ないのか分からない
しかし、パワコン1台の停止でも、放置する期間が長くなるほど売電損失は積み上がります。
この記事では、宮崎県内の低圧太陽光発電所を想定し、パワコン1台の停止によってどれくらいの売電損失が発生するのか、簡易的な計算方法や修理・交換・リパワリングの判断について解説します。
パワコン1台の停止でも放置しない方がよい理由
複数台のパワコンが設置されている発電所では、1台が停止しても発電所全体の発電量がゼロになるわけではありません。
例えば、9.9kWのパワコンが5台設置された49.5kWの低圧太陽光発電所で、1台だけ停止した場合、残り4台は引き続き発電します。
そのため、所有者から見ると「発電所は動いている」と感じやすく、部分停止を見逃してしまうことがあります。
しかし、同じ容量のパワコン5台に、おおむね同程度の太陽光パネル容量が接続されている場合、1台の停止による影響は単純計算で約20%です。
毎日の発電量が約20%失われる状態を放置すると、1か月、半年、1年間と時間が経過するほど、大きな売電損失につながります。
パワコン1台の停止はなぜ気付きにくいのか
発電所全体では発電を続けている
パワコンがすべて停止した場合は、発電量が大きく下がるため比較的気付きやすい状態です。
一方、5台中1台だけが停止した場合は、残り4台が発電を続けるため、発電所全体の数値だけを見ても異常が分かりにくいことがあります。
毎月の発電量は天候によって変わる
太陽光発電量は、晴天日数、雨天、気温、出力制御などによって毎月変動します。
売電収入が少なくても「今月は天気が悪かったから」と考え、パワコンの停止を見逃してしまう場合があります。
遠隔監視の通知が設定されていない
遠隔監視装置が導入されていても、異常通知が設定されていなかったり、登録したメールアドレスが古かったりすると、パワコン停止の通知を確認できません。
また、通信障害によって監視画面自体が更新されていない場合もあります。
売電明細が届いてから気付く
実際には、パワコンが停止してからすぐではなく、翌月の売電明細を確認して初めて異常に気付くケースがあります。
この場合、発見した時点ですでに1か月程度の売電損失が発生している可能性があります。
パワコン1台停止による発電量への影響
パワコン1台が停止した場合の発電量への影響は、単純にパワコンの台数だけでは決まりません。
実際の損失は、次の条件によって変わります。
- 各パワコンの容量
- パワコンごとに接続されているパネル容量
- ストリング構成
- 太陽光パネルの方角や傾斜
- 影の影響
- 過積載率
- 季節や天候
- 出力制御の実施状況
例えば、9.9kWのパワコン5台が設置されていても、各パワコンへ接続されているパネル枚数が異なれば、1台停止による損失割合も異なります。
この記事では分かりやすくするため、5台のパワコンにほぼ同程度のパネル容量が接続されているものとして、停止による影響を約20%で計算します。
売電損失の簡易計算方法
パワコン停止による売電損失は、次の考え方で概算できます。
売電損失 = 想定発電量 × 停止しているパワコンの割合 × 売電単価
停止期間を含めて計算する場合は、次のように考えます。
停止期間中の売電損失 = 停止期間中の想定発電量 × 停止割合 × 売電単価
例えば、同容量のパワコンが5台設置され、そのうち1台が停止している場合、簡易的な停止割合は次のとおりです。
1台 ÷ 5台 = 20%
ただし、これは簡易計算です。正確な損失を確認するには、パワコンごとの発電データ、ストリング構成、前年同時期の発電量などを確認する必要があります。
宮崎県内の低圧発電所を想定した計算例
ここでは、宮崎県内にある低圧太陽光発電所を想定して計算します。
年間発電量63,000kWhは、宮崎県内のすべての49.5kW発電所に共通する平均値ではなく、実際の発電所に近いモデルケースとして使用しています。
| 項目 | 想定条件 |
|---|---|
| パワコン | 9.9kW×5台 |
| パワコン合計容量 | 49.5kW |
| 年間発電量 | 63,000kWh |
| 売電単価 | 32円/kWh |
| 停止台数 | 5台中1台 |
| 想定停止割合 | 約20% |
1か月あたりの平均発電量
年間発電量63,000kWhを12か月で割ると、1か月あたりの平均発電量は次のとおりです。
63,000kWh ÷ 12か月 = 5,250kWh/月
パワコン1台分の発電量
5台中1台が停止し、停止による影響を20%とした場合、失われる発電量は次のとおりです。
5,250kWh × 20% = 1,050kWh/月
1か月の売電損失
売電単価を32円/kWhとして計算します。
1,050kWh × 32円 = 33,600円
このモデルケースでは、パワコン1台の停止を1か月放置すると、概算で約33,600円の売電損失が発生します。
ただし、太陽光発電量は毎月一定ではありません。発電量の多い春から夏に停止した場合は、月平均より損失が大きくなる可能性があります。
停止期間ごとの売電損失
同じ条件で停止期間ごとの売電損失を計算すると、次のようになります。
| 停止期間 | 概算の売電損失 |
|---|---|
| 1週間 | 約7,700円 |
| 1か月 | 約33,600円 |
| 3か月 | 約100,800円 |
| 6か月 | 約201,600円 |
| 1年間 | 約403,200円 |
修理費や調査費を惜しんで停止を放置した結果、修理費を上回る売電損失が発生する可能性があります。
特に売電単価が高い発電所では、停止期間が長くなるほど影響も大きくなります。
売電明細でパワコン停止に気付くケース
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 9.9kWのパワコン5台のうち、1台が停止する
- 残り4台は発電しているため、所有者は停止に気付かない
- 遠隔監視の通知も確認できていない
- 翌月の売電明細が届く
- 前年同月より売電収入が少ないことに気付く
- 監視画面を確認し、パワコン1台の停止が判明する
ただし、売電収入の低下だけでは、パワコン停止と断定できません。
天候、出力制御、パネルへの影、雑草、ケーブル異常なども発電量低下の原因になります。
遠隔監視の情報が確認できる場合は、パワコンごとの発電量、運転状態、エラー表示、停止した時刻などを確認して原因を絞り込みます。
パワコン停止と通信停止の違い
遠隔監視画面が更新されていない場合、パワコンが停止しているとは限りません。
主に次の2つの状態があります。
パワコンが実際に停止している
パワコン内部の故障、ブレーカー遮断、配線異常などにより、接続されている太陽光パネルの電力を交流へ変換できていない状態です。
この場合は、停止しているパワコンに接続された設備分の発電量が失われます。
通信だけが停止している
パワコンは正常に発電していても、ルーター、SIM、監視装置、通信線などの異常によって、遠隔監視画面へ情報が届かない場合があります。
通信停止だけであれば、すぐに売電損失が発生していない可能性もあります。
しかし、遠隔監視ができない状態を放置すると、その後パワコンが停止しても気付けません。
パワコンが停止したときの確認方法
遠隔監視で確認する内容
遠隔監視の情報が確認できる場合は、主に次の内容を確認します。
- パワコンごとの発電量
- 運転中・停止中などの状態
- エラーコード
- 停止した日時
- ほかのパワコンとの発電量の差
- 通信の最終更新日時
- 出力制御の状況
監視装置の種類によって確認できる情報は異なります。
現地で確認する内容
遠隔情報だけで原因を特定できない場合は、現地で次のような内容を確認します。
- パワコンの表示とエラー履歴
- ブレーカーの状態
- 電圧・電流
- 配線や端子の状態
- 絶縁や電気的な異常
- 接続箱やストリングの状態
- 太陽光パネルの状態
- 遠隔監視装置や通信機器
必要に応じてパワコンメーカーへ確認し、故障内容、修理の可否、部品供給、保証期間などを調べます。
原因確認前の再起動に注意
原因を確認する前にブレーカーやパワコンを再投入すると、一時的に復旧してエラー履歴や故障原因を確認しにくくなることがあります。
また、設備側に異常が残っている場合は、再び停止する可能性があります。
まずはパワコンの表示、エラーコード、ブレーカーの状態などを撮影し、専門業者へご相談ください。
修理・部分交換・全台交換の判断
パワコンが1台停止した場合でも、必ず全台交換になるわけではありません。
使用年数、故障内容、メーカー保証、部品供給、ほかのパワコンの状態などを確認して対応を判断します。
メーカー保証を確認する
メーカー保証期間内で、保証対象の故障と認められた場合は、保証による修理や交換ができることがあります。
保証期間だけでなく、保証条件や必要な手続きも確認します。
部品があれば修理を検討する
メーカーから修理部品が供給されている場合は、基板、ファン、内部部品などの交換によって復旧できる可能性があります。
ただし、修理後に別の部品が故障する可能性や、今後の部品供給期間も考慮する必要があります。
同型機器への部分交換
同じメーカー・同じ型式の機器を用意できる場合は、停止した1台だけを交換できることがあります。
同型中古品を利用できる場合もありますが、製造年、使用状態、保証、今後の部品供給などを踏まえて慎重に判断する必要があります。
宮崎電力では、長期的な運用を考慮し、新品への更新やリパワリングを中心にご提案します。
新品パワコンへの全台交換
次のような場合は、故障した1台だけを修理し続けるよりも、全台交換を検討した方がよいことがあります。
- 設置から長期間が経過している
- メーカーの保守期間が終了している
- 修理部品の供給が終了している
- 同じ型式のパワコンで故障が増えている
- ほかのパワコンも同時期に設置されている
- 修理費用と停止期間が大きくなっている
- 現在のメーカーから別メーカーへ変更したい
リパワリングを検討した方がよいケース
リパワリングとは、古くなったパワコンや設備を更新し、今後も安定して発電できる設備構成へ見直すことです。
単に故障したパワコンを交換するだけではなく、発電所全体の設備構成を確認し、次のような検討を行います。
- パワコンメーカーの変更
- パワコン台数の削減
- ストリング構成の見直し
- 配線や接続方法の確認
- 発電量シミュレーション
- 今後の保証や部品供給の確認
- 遠隔監視設備の更新
例えば、古いパワコンを1台ずつ修理しても、同時期に設置されたほかのパワコンが順番に故障する可能性があります。
そのたびに調査費、修理費、部品手配期間、売電損失が発生すると、長期的には全台交換より負担が大きくなる場合があります。
ただし、すべての発電所でリパワリングが最適とは限りません。
故障台数、使用年数、部品供給、修理費用、停止による売電損失、全台交換費用を比較して判断することが重要です。
売電損失と修理費用を比較する
パワコンの修理や交換には費用がかかります。
しかし、費用だけを見て対応を先送りすると、その間も売電損失が増え続けます。
今回のモデルケースでは、1台停止による売電損失は、1か月で約33,600円、6か月で約201,600円、1年間で約403,200円です。
修理・交換の判断では、次の金額を比較します。
- 現地調査にかかる費用
- 修理部品と作業費
- パワコン交換費用
- 機器が届くまでの売電損失
- 今後ほかのパワコンが故障するリスク
- 全台交換やリパワリングの費用
早めに調査を行えば、保証修理や部品交換など、費用を抑えた方法を選べる可能性があります。
宮崎電力の調査・復旧対応
宮崎電力では、遠隔監視の情報や発電所資料をもとに、パワコン停止の原因を確認します。
遠隔で原因を特定できない場合は、現地へ訪問してパワコン、ブレーカー、配線、電圧・電流、通信設備などを調査します。
調査結果に応じて、次の対応をご提案します。
- メーカー保証による修理・交換
- 部品交換による修理
- 同型機器への部分交換
- 新品パワコンへの交換
- メーカー変更
- パワコン台数の削減
- 発電量シミュレーション
- 全台交換・リパワリング
- 遠隔監視設備の復旧・更新
複数メーカーの設備を扱ってきた経験をもとに、発電所の状態や今後の運用を考慮して対応方法をご案内します。
低圧発電所の駆け付け一次調査料金
| 対象 | 駆け付け一次調査費 |
|---|---|
| メンテナンス会員・年1回目 | 無料 |
| メンテナンス会員・2回目以降 | 16,500円(税込) |
| 非会員 | 55,000円(税込) |
| 高圧発電所 | 個別見積もり |
上記は、低圧発電所への駆け付けと一次調査の料金です。
修理部品、メーカー対応、機器交換、電気工事、リパワリング工事などが必要な場合は、調査結果をご説明したうえで別途お見積もりします。
ご連絡から3営業日以内の現地対応を目安としていますが、発電所の所在地、担当者の予定、災害や故障の集中状況などにより、対応までにお時間をいただく場合があります。
パワコン停止・発電量低下の施工事例
遠隔監視でPCS停止を早期発見した施工事例
遠隔監視によってパワコンの停止を確認し、現地へ駆け付けて復旧対応を行った事例です。
PCSごとの発電量低下を発見した施工事例
発電所全体では発電していましたが、PCSごとのデータを比較することで、一部の発電量低下を発見した事例です。
発電所停止の原因を調査した施工事例
PCS故障や通信線の異常など、複数の問題が発生していた発電所を調査した事例です。
パワコンの基板交換を行った施工事例
パワコン内部の故障を確認し、基板交換によって設備を復旧した事例です。
パワコン1台の停止に関するよくある質問
5台中1台の停止なら、残り4台が動いているので放置しても大丈夫ですか?
発電所全体は動いていても、停止しているパワコン分の発電量は失われています。
停止期間が長くなるほど売電損失が増えるため、早めに原因を確認することをおすすめします。
パワコン1台が停止すると、必ず発電量が20%減りますか?
必ず20%減るわけではありません。
パワコンごとの容量、接続されているパネル枚数、ストリング構成、過積載率などによって損失割合は異なります。
同容量のパワコン5台に同程度のパネル容量が接続されている場合の簡易的な目安が約20%です。
売電明細だけでパワコンの故障は分かりますか?
売電明細で発電量低下に気付くことはできますが、故障原因までは特定できません。
天候、出力制御、影、雑草、通信異常などの可能性もあるため、遠隔監視データや現地設備を確認します。
ブレーカーを上げ直してもよいですか?
原因確認前にブレーカーを操作すると、一時的に復旧してエラー履歴や停止原因を確認しにくくなることがあります。
まず表示やエラーコードを撮影し、専門業者へご相談ください。
1台だけ新品へ交換できますか?
同じメーカー・同じ仕様の機器を用意できる場合は、1台だけ交換できることがあります。
異なるメーカーのパワコンを既存設備へ1台だけ混在させる場合は、設備構成や電力会社への手続きに問題が生じる可能性があるため、慎重な確認が必要です。
修理とリパワリングはどちらがよいですか?
使用年数、部品供給、保証、故障台数、修理費、停止による損失などによって異なります。
比較的新しく、修理部品が供給されている場合は修理が適していることがあります。
一方、設置から年数が経過し、複数台の故障リスクや部品供給終了が考えられる場合は、全台交換やリパワリングを検討する価値があります。
まとめ
複数台のパワコンがある太陽光発電所では、1台だけ停止しても残りのパワコンが発電を続けるため、異常に気付きにくいことがあります。
9.9kWのパワコン5台、年間発電量63,000kWh、売電単価32円のモデルケースでは、1台の停止を1か月放置すると、概算で約33,600円の売電損失になります。
停止が半年続けば約201,600円、1年間では約403,200円まで損失が増える計算です。
実際の損失はストリング構成、パネル容量、季節、天候、出力制御などによって異なりますが、1台の停止でも早めに原因を確認することが重要です。
修理費だけを見て対応を先送りするのではなく、停止中の売電損失、部品供給、ほかのパワコンの故障リスク、全台交換費用まで含めて比較しましょう。
宮崎電力では、遠隔確認、現地調査、メーカー対応、修理、パワコン交換、発電量シミュレーション、リパワリングまで一括して対応しています。
